2017年5月1日月曜日

和風月名

カレンダーには1月・2月...という数字のほか、睦月・如月...という旧暦の和風月名が記されているものも多いですね。
和風月名に風情を感じるのは、その月にふさわしい呼び名だからこそ。月の異称には様々なものがありますが、最も一般的なものを覚えておくとよいでしょう。

睦月(むつき) 1月

仲睦まじい月。正月に家族や親戚でなごやかな宴を催し、むつみあうことからつきました。「生月(うむつき)」が転じたという説もあります。

如月(きさらぎ) 2月

「如月」という漢字は、中国最古の辞書『爾雅(じが)』の「二月を如となす」という記述に由来しますが、中国では「きさらぎ」とは読みません。旧暦の2月は現在の3月半ばなので、寒さがぶり返しいったん脱いだ衣を更に着る月という意の「衣更着」が「きさらぎ」の語源になったという説が有力です。

弥生(やよい) 3月

暖かな陽気にすべての草木がいよいよ茂るという意味の「弥生(いやおい)」がつまって「弥生(やよい)」になったとされています。

卯月(うづき) 4月

卯の花(ウツギの花)が盛りになる月。また、田植えをするから「植月(うづき)」という説もあります。

皐月(さつき) 5月

早苗を植える「早苗月(さなえづき)」が略されて「さつき」となり、後に「皐月」の字があてられました。「皐」という字には水田という意味があります。

水無月(みなづき) 6月

旧暦の6月は梅雨明け後で夏の盛りであることから、水が涸れて無くなる月であるという説と、田んぼに水を張るので「水月(みなづき)」が変化したともいわれています。

文月(ふみづき/ふづき) 7月

短冊に歌や字を書く七夕の行事から「文披月(ふみひろげづき)」、稲穂が膨らむ月ということで「ふくみ月」、これらが転じて「文月」になったといわれています。

葉月(はづき) 8月

葉の落ちる月「葉落月(はおちづき)」が転じて「葉月」。現代感覚では葉が生い茂る様子を思い浮かべますが、旧暦では7月から秋となるため、秋真っ盛りだったのです。

長月(ながつき) 9月

秋の夜長を意味する「夜長月(よながづき)」の略で「長月」になりました。また、秋の長雨の「長雨月(ながめづき)」、稲穂が実る「穂長月(ほながづき)」からという説も。

神無月(かんなづき/かみなしづき) 10月

神々が出雲の国に行ってしまい留守になるという意の「神なき月」が転訛して「神無月」。神々が集まる出雲の国では「神在月(かみありつき)」といいます。

霜月(しもつき) 11月

文字通り霜が降る月という意の「霜降月(しもふりつき)」の略で「霜月」となりました。

師走(しわす) 12月

12月は僧(師)を迎えてお経を読んでもらう月でした。師が馳せる月という意の「師馳す」が転訛し、走るという字があてられるようになりました。

2017年3月3日金曜日

つるし雛

長寿を願う桃や厄除けの猿、神の遣いの白うさぎ──「つるし雛」は、絹の端切れでつくった可憐な布細工をつるし、娘や孫の初節句を祝うという、日本独自の風習です。発祥は江戸後期。今では、山形県の酒田(さかた)、静岡県の伊豆稲取(いなとり)、福岡県柳川(やながわ)の3か所でしか見られないのだとか。遠く離れたこの3つの町で、なぜ同じ文化が育まれたのでしょう?
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「つるし雛」のルーツを求めて春の旅へ

雛祭りの「つるし飾り」という風習の始まりは早咲きの河津桜(かわづざくら)が美しい、静岡県の稲取温泉。母や祖母が手づくりした飾りで女の子の初節句を祝おうという、素朴な庶民文化だったのです。雛人形をつるすのではなく、着物の端切れ(はぎれ)を縫い合わせて綿を入れた布細工を、雛壇の両側に飾りつけたのが原点。現在では、直径約25㎝の下げ輪に、11個の飾りを付けた赤い糸を5本つるし、これを対で飾るのが基本の形になっています。
つるし飾りは本来、嫁ぐころに“どんど焼”に納めて焚き上げるもの。しかし、思い出の飾りをどうしても納めきれず、大事にしまっておく人もいたそうです。
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ところ離れて福岡の美しい城下町。川下りで知られる水郷(すいごう)柳川にも、つるし飾りで桃の節句を祝う庶民の風習「さげもん」があります。こちらの発祥は諸説あり、ひとつは高価な雛人形が買えない代わりに古着の端切れで小物をつくって祝ったという説。もうひとつは、城の奥女中が着物の裂(きれ)で琴の爪を入れる袋物をつくり、腰にさげて飾ったのが始まりという説。いずれにせよ、伝統工芸の“柳川まり”とともに伝承されたといわれます。
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さげもんは、雛段の両脇に左右対称で飾るのが正式。まず、一尺三寸(約40㎝)の竹の輪に赤布を巻き、7個の飾りを付けた糸を7本つるします。さらに大きな柳川まりを2個加えて飾りは51個。これを対でつるすのです。
さげもんと、稲取のつるし飾り。形は似ているものの、つながりは定かではありません。ただ、江戸時代に物流を支え、伊豆を寄港地のひとつとしていた廻船(かいせん)「北前船」が、近畿以南へ廻る西海道として、肥前国(今の柳川に近い佐賀や長崎)に寄っていた史実もあり。いつかどこかで、船を介した交流が行われたとしても不思議ではないのです。

つるし飾りをめぐる、不思議な文化交流。鍵を握るのは、江戸時代の“北前船”?

北前船の港町として発展した山形県の酒田。のどかな水田が広がるこの町では、まだ肌寒い2月下旬から、ひと足早い雛祭りが開かれます。赤い幕を張った大きな傘に、手づくりの飾り物をつるした「傘福」がその主役。町中が、赤い傘の飾りで賑わいます。
現在も昭和50年代の傘福が奉納されている海向寺の観音堂。地元の女性が家族の幸せを願ってつくった傘福の下で、お寺の方のお話をうかがいました。「本来の傘福は、個人の家に飾るものではなく、女性たちが力を合わせてつくり奉納するものです。祈りを込めると同時に、手仕事に集中することで心が穏やかになり、隣人同士のコミュニケーションにもなる。とてもいい信仰の形ですね。伊豆や柳川のつるし飾りと相似点があるともいわれていますが、同じ国のこと、どこかで文化交流はあったのでしょう。各地に似たものがあるのもうなずけます。むしろ、それだけ人が心を寄せやすく、心惹かれる祈りの形なのだと思いますよ」
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雛のつるし飾りまつり

伊豆稲取温泉
2017年1月20日(金)〜3月31日(金)

さげもんめぐり

柳川雛祭り
2017年2月11日(土)〜4月3日(月)

酒田雛街道

酒田
2017年3月1日(水)〜4月3日(月)

2017年2月26日日曜日

春の山菜

春は芽吹きの季節。そして山菜の季節でもあります。
山菜は鮮度が落ちやすいため、遠方では味わえないことが多かったのですが、最近ではスーパーなどで簡単に手に入るようになりました。この季節ならではの旬の味を楽しみましょう。
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山菜の味の秘密

春の山菜には独特の苦味があり、この苦味が春を感じさせてくれます。実は、この苦味やえぐみが、からだにとてもよいものなのです。山菜を食べると、天然の苦味や辛味が冬の間に縮こまっていたからだに刺激を与えて、体を目覚めさせ、活動的にしてくれるといいます。「春の料理には苦味を盛れ」ということわざもあるそうです。
この苦味成分は、抗酸化作用のあるポリフェノール類で、新陳代謝も促進してくれます。
ポリフェノールは、活性酸素を除去し、老化の進行を遅らせる働きがあります。
また、山菜にはビタミンも豊富なものが多いのも特徴です。昔は、冬場は葉もの野菜が不足するため、春にビタミン補給をするという効用もあったのでしょう。

山菜をおいしく食べるコツ

香りや苦味が苦手な人も、次のような調理方法でおいしく食べられます。

油であげる

山菜は油と相性がよいものが多く、天ぷらにすると苦味が程よくぬけ、香り高い山菜の風味が増します。山菜が苦手な人は天ぷらがおすすめ。

茹でる

さっと茹でて水気を絞って切るだけのおひたしにします。しょうゆとかつお節をかけたり、ごま和え、ぽん酢和え、味噌和え、マヨネーズ和えなど、好みの味付けで。それぞれの山菜の風味が味わえる食べ方です。

下茹でしてアク抜きしてから調理

アクの強い山菜は、下茹でしてアクを抜いてから、煮物や和え物に使うとよいです。

さまざまな春の山菜

地域や時季にもよりますが、比較的ポピュラーで、手に入りやすい山菜をピックアップしてみました。手に入れるチャンスがあれば、ぜひ一度味わってみてください。

ふきのとう

春を待ちかねたように雪の下からちょこんと顔を覗かせ、最も早くから収穫できるのがふきのとうです。天ぷらにして、塩でシンプルに食べるのが定番。
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たらの芽

たらの芽はアクが強く、香りも高く食べごたえがあります。小さいものは天ぷらで、少しひらいて大きくなってしまったものは、ゆでてごま和えなどに。
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山うど

山うどは、捨てる部分は全くなく、葉や新芽の部分は天ぷらに、茎は酢水に浸してアク抜きし、そのまま食べられます。サッと湯がいて酢みそ和えに。煮物、炒め物などにも。
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わらび

わらびはアクが強いのでわら灰などでアク抜きをし、水にさらしてから使います。おひたし、みそ汁の実、和え物などに。
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ぜんまい

ぜんまいはアクが強すぎるので、ゆでてから天日で干して、干しぜんまいにします。干すことで風味が増し、おいしくなります。昔は山里の大切な保存食でした。
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青こごみ

アクや臭みがないので、下準備の手間がかからず、おいしくい食べられます。天ぷらはもちろん、程よいぬめりがあるのでゴマやクルミ、マヨネーズなどを使った和え物に。
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よもぎ

昔、よもぎの香りには邪気を払う力があるといわれていました。そのよもぎの香りと風味を生かしたよもぎ団子や草もちなどがポピュラーですが、生を天ぷらにして食べるのもおいしいものです。
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のびる

ツーンとする香りとちょっとヌルッとした食感があり、球根の部分を生のまま味噌をつけて食べるのがおすすめ。天ぷらにしてもおいしく、茎の部分もニラやネギのようにして食べられます。
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せり

おひたしやごま和えがおすすめですが、茹ですぎると硬くなり、味が落ちてしまうので注意。春の七草の一つとして七草粥にも用いられます。
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うるい

くせやアクはないので食べやすい山菜です。独特の歯ざわりとぬめりが特徴で、歯触りを楽しむならおひたしやサラダ、浅漬けに。ぬめり感を生かすならみそ汁の実や和え物に。
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こしあぶら

苦みが強く香りもあるので、天ぷらが一番。苦みが油で和らぎ、コクとなります。炒め物にも適しています。バター炒めもおすすめです。
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行者にんにく

にんにくのような香りがあり、山奥で修行する行者たちが好んで食べたことが名前の由来です。炒め物での調理がおすすめですが、刻んで薬味としても使えます。
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根曲がり竹

雪国の山に生える竹の子で、根本から横に伸びて弓なりに曲がる様子から根曲がり竹と呼ばれます。皮をむいて茹でたあと、煮物や炒め物に。皮付きのまま焼いて皮をむき、しょうゆや味噌をつけてもおいしいです。
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山菜を採るときはご注意!

山菜をおいしく食べるには、とにかく新鮮な物を選ぶことです。スーパーなどの店頭でも手に入りやすくなった山菜ですが、本来の味を求めるなら、やはり山菜の採れる地域に足を運んで食べたいものです。山菜採りで注意したいのは山菜と毒草を間違え、うっかり食べて中毒を起こしてしまうことです。初心者は必ず経験者に同行してもらって、安心して楽しみたいものです。 また、山菜は全部採らず、必ず1、2本は残しておきます。そうしないと翌年に芽が出なくなってしまうからです。春が来るたびに自然の恵みを楽しむためには、自然を大切に守っていくことも必要です。