右を見れば、遠く微かに鈴鹿の山並がどこか頼りなげに薄く延びている。
さらに眼を左へと緩やかに転じていく。三上山の形のよい山姿が静かな湖面の
先に浮かび上がる。その横には八幡山と沖島が深い緑の衣に包まれるように
横たわっている。更にその横奥には、御嶽山を初めとする木曾の山並が
薄く横長に伏せており、その前にはその削られた山肌が痛々しい伊吹の
山が悄然と立っている。全てが琵琶湖の蒼さを照らし出すように薄明るさの
中にあった。よく見る光景だ。だが、一転空に眼を向ければ、秋にしか見られない
素晴らしい舞台があった。遥か上には、櫛を引いたような雲が幾筋も
その軽やかな形を見せている。その下には、繭がその固い形を
ほぐすような雲がふわりと浮き伊吹の上からゆっくりと比良の山に向って流れ来る。
さらに、しっかりとした二本の飛行機雲を切り取る様に、その下をやや黒味
のある雲がこれも比良に向かい素早い流れでこちらに向うように流れ来る。
ここから見える空は平板としてその奥深さを知る事は出来ない。しかし、
いくつもの雲の流れがその空の深さを示すようにお互いを遮ることなく流れ
すぎていく。久しぶりに見る、感じる空の景観であった。足下では、
かさかさと枯れ葉の奏でる音が幾重にもなってこの身に迫る。
二十四節気「立秋(りっしゅう)」
立秋(8月7日頃)
暦の上では秋になるが、まだまだ残暑が厳しく気温の高い日が続く時期である。
・涼風至(すずかぜいたる)8月7日頃
涼しい風が吹き始める頃。まだ暑いからこそ、ふとした瞬間に涼を感じること
ができる。
・寒蝉鳴(ひぐらしなく)8月12日頃
カナカナと甲高くひぐらしが鳴き始める頃。日暮れに響く虫の声は、一服の清涼剤。
・蒙霧升降(ふかききりまとう)8月17日頃
深い霧がまとわりつくように立ち込める頃。秋の「霧」に対して、春は「霞」
と呼ぶ。
二十四節気「処暑(しょしょ)」
処暑(8月23日頃)
暑さが和らぐという意味。長く厳しかった夏もようやく暑さの峠を越し、朝夕は涼風が
吹き始める。身体に強さがわいてくる。
・綿柎開(わたのはなしべひらく)8月23日頃
綿を包むガクが開き始める頃。綿の実がはじけ白いふわふわが顔をのぞかせた様子。
見ているだけで軽やかな気持になる。
・天地始粛(てんちはじめてさむし)8月28日頃
天地の暑さがようやくおさまり始める頃。「粛」は縮む、しずまるという意味。
・禾乃登(こくものすなわちみのる)9月2日頃
いよいよ稲が実り、穂を垂らす頃。「禾」は稲穂が実ったところを表した象形文字。
二十四節気「白露(はくろ)」
白露(9月8日頃)
夜の間に大気が冷え、草花の上に朝露が宿るという意味。本格的な秋の訪れを
感じる頃となる。
・草露白(くさのつゆしろし)9月7日頃
草に降りた露が白く光って見える頃。朝夕の涼しさが際立ってくる。涼しさよりも
寒さの方が似合ってくる。
・鶺鴒鳴(せきれいなく)9月12日頃
せきれいが鳴き始める頃。せきれいは日本神話にも登場し、別名は「恋教え鳥」。
・玄鳥去(つばめさる)9月17日頃
春先に飛来した燕が日本で夏を過ごし子育てを終え、南へ帰っていく。
越冬先である東南アジアやオーストラリアまでは数千キロメートルにも及ぶ旅が待って
いる。
電線に数10羽並んでいた燕の群れもいつの間にか消えている。
二十四節気「秋分(しゅうぶん)」
秋分(9月23日頃)
春分と同じく真東から昇った太陽が真西に沈み、昼と夜の長さがほぼ同じになる。
「暑さ寒さも彼岸まで」ということわざもあるように、この日を境にだんだんと
寒さが増していく。
・雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)9月23日頃
雷が鳴らなくなる頃。春分に始まり夏の間鳴り響いた雷も、鳴りをひそめる。
俳句の季語では「雷」は夏、「稲妻」は秋に分類されている。
・蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)9月28日頃
虫たちが土にもぐり、入口の戸をふさぐ頃。冬ごもりの支度をする時期。
・水始涸(みずはじめてかるる)10月3日頃
田んぼの水を抜き、稲刈りの準備をする頃。井戸の水が枯れ始める頃との説も。
二十四節気「寒露(かんろ)」
寒露(10月8日頃)
寒露とは、文字の示す通り晩夏から初秋にかけて野草に宿る冷たい露のことを言う。
しんしんと深まりゆく秋、大気も安定して青く高い空、秋晴れの日が多くなる頃。
・鴻雁来(こうがんきたる)10月8日頃
雁が渡ってくる頃。清明の時期に北へ帰っていった雁たちが、再びやってくる。
・菊花開(きくのはなひらく)10月13日頃
菊の花が咲き始める頃。旧暦では重陽の節供の時期で、菊で長寿を祈願した。
・蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)10月18日頃
戸口で秋の虫が鳴く頃。昔は「こおろぎ」を「きりぎりす」と呼んでいた。
二十四節気「霜降(そうこう)」
霜降(10月23日頃)
朝晩の冷え込みがいっそう厳しくなり、朝霜が見られる頃。山や街も紅葉で美しく彩ら
れる季節の訪れ。
・霜始降花(しもはじめてふる)10月23日頃
山里に霜が降り始める頃。草木や作物を枯らす霜を警戒する時期となる。
・霎時施(こさめときどきふる)10月28日頃
ときどき小雨が降る頃。「霎」をしぐれと読むことも。ひと雨ごとに気温が下がり
寒さが一段と増す。
・楓蔦黄(もみじつたきばむ)11月2日頃
楓(かえで)や蔦の葉が赤や黄色に色づく季節。紅葉という言葉は、霜や時雨の冷たさ
に、葉が揉み出されるようにして色づくことから「揉み出づ」~「もみづ」~
「もみじ」と転訛したという説もある。
小野地区では、
小野神社のしとぎ祭り
小野神社は、古代氏族である小野一族の始祖を祀り、飛鳥時代の創建と伝わる。
小野妹子・篁(たかむら 歌人)・道風(書家)・などを生んだ古代の名族小野氏の氏
神である。推古天皇の代に小野妹子が先祖を祀って創建したと伝える。
境内に小野篁神社(本殿:重文)がある。また近くの飛地境内に道風神社(本殿:重文
)がある。道風は、書道家として、当時は著名3人の1人に数えられた。埼玉の春日井
も関係がある。平安時代には、小野氏同族の氏神として春秋に祭祀が行われており、
平安京内に住む小野氏や一族がこの神社に参向していた。
境内から石段で高くなった本殿前の空いたスペースに、この神社の祭神・米餅搗大使主
命にちなんで、お餅が飾られている。
毎年10月20日には、全国から餅や菓子の製造業者が自慢の製品を持って神社に集まり
「しとぎ祭」が行われる。米餅搗大使主命は応神天皇の頃、わが国で最初に餅をついた
餅造りの始祖といわれ、現在ではお菓子の神様として信仰を集めている。
参道入口に「餅祖神 小野神社」と刻まれた道標がある。
南小松地区では、
八幡神社の祭礼
南小松の山手にあり、京都の石清水八幡宮と同じ時代に建てられたとされます。
木村新太郎氏の古文書によれば、六十三代天皇冷泉院の時代に当地の夜民牧右馬大師
と言うものが八幡宮の霊夢を見たとのこと。そのお告げでは「我、機縁によって
この地に棲まんと欲す」と語り、浜辺に珠を埋められる。大師が直ぐに目を覚まし
夢に出た浜辺に向うと大光が現れ、夢のとおり聖像があり、水中に飛び込み
引き上げ、この場所に祠を建てて祀ったのが始まりです。
春の祭礼(四月下旬)には、神輿をお旅所まで担ぎ、野村太鼓奉納や子供神輿
が出ます。また、この辺りは野村と呼ばれ、特に自家栽培のお茶が美味しいようです。
八朔祭(9月1日)が行われ、夜7時ごろからは奉納相撲が開催されます。
八幡神社の狛犬は、明治15年に雌(右)、明治 17 年に雄(左)(名工中野甚八作)
が作られ、県下では一番大きいといわれています。体長180センチ弱ですが、
左右違う、そのたてがみや大きな眼が印象的です。
秋
山装う
二十四節気「立秋(りっしゅう)」
・涼風至(すずかぜいたる)8月7日頃
涼しい風が吹き始める頃。まだ暑いからこそ、ふとした瞬間に涼を感じること
ができます。秋隣。
→露草、桃。しじみ。
・寒蝉鳴(ひぐらしなく)8月12日頃
カナカナと甲高くひぐらしが鳴き始める頃。日暮れに響く虫の声は、一服の清涼剤。
→ほおずき。めごち。ひぐらし。
・蒙霧升降(ふかききりまとう)8月17日頃
深い霧がまとわりつくように立ち込める頃。秋の「霧」に対して、春は「霞」と呼びま
す。樹雨きさめ
→水引、新しょうが。真たこ。
二十四節気「処暑(しょしょ)」
・綿柎開(わたのはなしべひらく)8月23日頃
綿を包むガクが開き始める頃。綿の実がはじけ白いふわふわが顔をのぞかせた様子。
→すだち、綿花。かさご。
・天地始粛(てんちはじめてさむし)8月28日頃
天地の暑さがようやくおさまり始める頃。「粛」は縮む、しずまるという意味です。
野分のわき。
→ぶどう。ぐち。
・禾乃登(こくものすなわちみのる)9月2日頃
いよいよ稲が実り、穂を垂らす頃。「禾」は稲穂が実ったところを表した象形文字。
→無花果いちじく、きんえのころ。まつむし。鰯。
二十四節気「白露(はくろ)」
・草露白(くさのつゆしろし)9月7日頃
草に降りた露が白く光って見える頃。朝夕の涼しさが際立ってきます。
→秋の七草(萩、すすき、葛、なでしこ、おみなえし、藤袴、桔梗)。島鯵。
秋の野に咲きたる花を指および折り かき数ふれば七種ななくさの花 山上憶良
・鶺鴒鳴(せきれいなく)9月12日頃
せきれいが鳴き始める頃。せきれいは日本神話にも登場し、別名は「恋教え鳥」。
→梨、オシロイバナ(夕化粧ともいう)。あわび。鶺鴒せきれい チチィとなく。
・玄鳥去(つばめさる)9月17日頃
燕が子育てを終え、南へ帰っていく頃。来春までしばしのお別れです。
→鶏頭、なす。昆布。
二十四節気「秋分(しゅうぶん)」
・雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)9月23日頃
雷が鳴らなくなる頃。春分に始まり夏の間鳴り響いた雷も、鳴りをひそめます。
→彼岸花、松茸。はぜ。
・蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)9月28日頃
虫たちが土にもぐり、入口の戸をふさぐ頃。冬ごもりの支度をする時期です。
→紫苑、里芋。さんま。茅場(ススキの野原)芋茎ずいき、里芋の茎。
・水始涸(みずはじめてかるる)10月3日頃
田んぼの水を抜き、稲刈りの準備をする頃。井戸の水が枯れ始める頃との説も。
→金木犀、銀杏、稲の実り。とらふぐ。
二十四節気「寒露(かんろ)」
・鴻雁来(こうがんきたる)10月8日頃
雁が渡ってくる頃。清明の時期に北へ帰っていった雁たちが、再びやってきます。
→ななかまど、しめじ。ししゃも。鴈渡し(晩秋に吹く北風)
・菊花開(きくのはなひらく)10月13日頃
菊の花が咲き始める頃。旧暦では重陽の節供の時期で、菊で長寿を祈願しました。
→栗。はたはた。菊晴れ(菊の花が咲くころに青空が晴れ渡る)
・蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)10月18日頃
戸口で秋の虫が鳴く頃。昔は「こおろぎ」を「きりぎりす」と呼びました。
→柿。鯖。
二十四節気「霜降(そうこう)」
・霜始降花(しもはじめてふる)10月23日頃
山里に霜が降り始める頃。草木や作物を枯らす霜を警戒する時期です。
→紫式部。ほっけ。ひよどり ヒーヨとなく。
・霎時施(しぐれときどきふる)10月28日頃
ときどき小雨が降る頃。「霎」をしぐれと読むことも。ひと雨ごとに気温が
下がります。初時雨、片時雨、横時雨
→山芋。きんき。
・楓蔦黄(もみじつたきばむ)11月2日頃
楓(かえで)や蔦の葉が色づく頃。晩秋の山々は赤や黄に彩られ、紅葉
狩りの季節です。
→さつまいも。かわはぎ。
俳句 秋
風雲や時雨をくばる比良おもて 大草
夕焼けの比良を見やりつ柿赤し 惣之助
楊梅の瀧見失う船の秋 虚子
有明や比良の高根も霧の海 白堂
名月やひそかに寒き比良が嶺 歌童
和歌 秋
・ち早ふる比良の御山のもみぢ葉に
ゆうかけわたすけさの白雲 安法
・宿りするひらの都の仮庵に
尾花みだれて秋風ぞ吹く 光俊朝臣
・小浪や比良の高嶺の山おろしに
紅葉を海の物となしたる 刑部卿範
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